2026年10月1日、改正労働施策総合推進法の施行により、企業などの事業主にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務付けられました。電話で顧客や取引先に対応する職場も対象です。
電話対応では、相手の要求を確認しながら、正当なクレームとカスハラを見極め、必要に応じて管理者への引き継ぎや通話の終了を判断しなければなりません。そのため、担当者個人に判断を任せるのではなく、会社として対応手順や電話を切る基準を決めておくことが重要です。
また、通話録音は、実際の発言や対応の経緯を残し、カスハラが発生した際の事実確認やその後の判断に役立ちます。
2026年10月から義務化されたカスハラ対策とは?
厚生労働省の指針では、事業主が講じるべき措置を、主に次の5つに分けて示しています。
- 方針と対処方法の周知: カスハラに毅然と対応し、従業員を保護する方針と、発生時の対処方法を明確にして従業員へ伝える。
- 相談体制の整備: 相談先をあらかじめ定め、相談を受ける担当者が適切に対応できるようにする。
- 発生後の対応: 事実を速やかに確認し、被害を受けた従業員への配慮と再発防止を行う。
- 悪質なケースへの対応体制: 特に悪質な言動に対する方針を定め、実行できる体制を整える。
- プライバシーと相談者の保護: 関係者のプライバシーを守り、相談や事実確認への協力を理由とする不利益な取り扱いを防ぐ。
方針を掲示するだけでなく、相談を受けた人がどう動くかまで決めておく必要があります。電話対応の現場では、管理者への連絡方法や通話を引き継ぐ手順として具体化します。
電話でのカスハラとは?正当なクレームとの違い
電話でのクレームや厳しい意見が、すべてカスハラに該当するわけではありません。厚生労働省の定義では、次の3つの要素をすべて満たす言動が対象です。
- 顧客、取引先、施設利用者など、事業に関係する人による言動である。
- 業務の性質や状況に照らして、社会通念上許容される範囲を超えている。
- その言動によって、従業員の就業環境が害されている。
一般消費者からの電話だけでなく、取引先の担当者からの電話も対象になり得ます。
電話で問題になる例には、人格を否定する暴言や侮辱、危害を加えると告げる脅迫、不当な補償の要求、執拗な繰り返し電話などがあります。長時間の通話についても、話の内容や進展、頻度、業務への影響を踏まえて判断します。
商品やサービスに問題があり、顧客が合理的な範囲で説明や改善を求めている場合は、正当なクレームとして対応します。ただし、要求そのものが妥当でも、脅迫や著しい侮辱など、その伝え方によってカスハラに該当する場合があります。
また、障害に伴う合理的配慮を求めること自体はカスハラではありません。口調や通話時間だけで一律に判断せず、要求の内容、言動の方法、そこに至る経緯を確認する必要があります。
従業員が個人の携帯番号で顧客対応をしている場合は、プライベート番号を仕事に使うリスクも確認し、業務用の連絡先との使い分けを見直しましょう。
カスハラの電話対応はどう進める?対応手順と伝え方
ここでは、会社の対応手順を具体化する際の例を紹介します。脅迫など危険性の高い言動がある場合は、通常の手順を最後まで続けることを優先せず、管理者への連絡や安全確保に切り替えます。
事実と要望を確認する
まず、何が起きたのか、相手が何を求めているのかを整理します。対応履歴や契約内容を確認し、会社側に不備があれば、その点について謝罪し、対応を説明します。
伝え方の例:
「ご相談内容を確認させてください。商品が届いていないため、配送状況の確認をご希望ということでよろしいでしょうか。」
相手の要求が途中で変わった場合も、話を整理し直します。その場で確認できない事項は、調査が必要であることを伝えます。
対応できる内容と理由を伝える
確認できた事実に基づき、対応できることと、対応できない要求の理由を説明します。担当者の権限を超える補償や、確認できていない期限を約束しないようにします。
伝え方の例:
「交換手続きは可能です。一方、ご要望の補償については、この場ではお約束できません。確認の上、回答いたします。」
確認後に回答する場合は、誰が、どの方法で連絡するかを決め、実際に対応可能な目安を伝えます。
問題のある言動は管理者へ報告する
暴言や不当な要求が続く場合は、社内の報告基準に従って管理者へ相談します。引き継ぐ際は、相手の要望、すでに説明した内容、問題となった発言を共有すると、同じ説明を最初から繰り返す負担を減らせます。
引き継ぎが決まった場合の伝え方の例:
「担当の責任者に状況を共有し、対応を引き継ぎます。少々お待ちください。」
管理者が不在の場合の連絡先や、担当者が通話を終了できる条件も決めておきます。終了を検討する基準と警告の文例は、次の項目で説明します。
管理者への引き継ぎ方法を見直す場合は、CIRCLEモバイルの保留・転送機能もご確認ください。状況を伝えてから通話を引き継ぐ「取次転送」に対応しています。
通話後に記録を残し、従業員をケアする
日時、相手の情報、問題となった言動、実施した対応、管理者の判断を記録します。録音がある場合は、対象の通話を特定できる情報も添え、同じ相手から再び連絡があったときの担当者と対応方針を決めます。
被害を受けた従業員の状態を確認し、必要に応じて電話対応から一時的に外す、以後の窓口を変更する、相談や心身のケアにつなぐなどの対応を取ります。録音がない場合も、本人の申告やメモ、周囲の従業員の話から事実確認を進めます。
カスハラの電話は切っていい?対応を終了する判断基準
カスハラの電話を、担当者がいつまでも受け続けなければならないわけではありません。厚生労働省の指針は、十分に説明しても同じ要求が繰り返される場合、一定の時間が経過した段階で電話を終了することを対処例に挙げています。
ただし、全国一律で「何分たったら切ってよい」という時間は定められていません。企業では、次のような状況を踏まえて、管理者への相談や通話終了の基準を定めます。
- 注意しても、暴言や人格を否定する発言が続く。
- 対応できない理由を説明しても、不当な要求が繰り返される。
- 十分に説明しても話が進展せず、長時間の拘束によって通常業務に支障が出ている。
時間の目安を設ける場合は、状況を確認するための報告基準として使い、経過時間だけで自動的に打ち切らない運用にします。会社側の確認待ちなどで通話が長引いている場合まで、同じ扱いにはできません。
警告と通話終了の伝え方
通常の対応では、問題となっている言動を具体的に伝え、改善しない場合は通話を終了する旨を案内します。次の文例は、自社の対応方針や実際の状況に合わせて調整してください。
| 場面 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 暴言が続いている | 「ご用件には対応いたしますが、担当者を侮辱する発言はお控えください。同様の発言が続く場合は、このお電話での対応を終了いたします。」 |
| 説明済みの要求が繰り返されている | 「ご要望にお応えできない理由は、先ほどご説明したとおりです。同じ内容でのやり取りが続く場合は、本日のお電話での対応を終了いたします。」 |
| 警告後も暴言が続いている | 「先ほどお控えいただくようお願いしましたが、同様の発言が続いているため、この通話を終了いたします。」 |
危害を加えると告げる脅迫など、犯罪に該当する可能性がある言動がある場合は、通常の警告手順や通話時間の基準にこだわらず、従業員の安全を優先して管理者や警察などへ連絡します。法的な対応が必要な場合は、法務担当者や弁護士と連携します。
なお、業法上のサービス提供義務や、対応を中断した場合の生命・健康への影響がある業務では、それらも踏まえて対応方法を定める必要があります。
カスハラ対策に通話録音を活用するメリット
今回のカスハラ対策義務化で、すべての企業に通話録音の導入が義務付けられたわけではありません。録音は、電話で起きた出来事を確認するために活用できる手段の一つです。
録音が残っていれば、実際の発言、声の調子、要求の繰り返し、担当者が行った説明を後から確認できます。従業員の申告だけでなく、顧客の主張や会社側の応対も確認できるため、双方の言い分を整理する材料になります。
管理者はその記録を使って、顧客への回答、以後の窓口変更、外部への相談などを検討できます。また、事案を振り返る際には、説明に不足がなかったか、管理者へ引き継ぐタイミングは適切だったかを検証し、手順や研修を改善できます。
厚生労働省の指針でも、事実確認の方法として録音・録画などの客観的な証拠の確認を挙げています。導入時には、録音する範囲に加え、問題のあった通話を誰が確認し、その後の対応を誰が判断するかまで決めておきましょう。
電話で何があったのか、 録音で確認できるように
通話録音の告知は必要?利用目的と録音データの管理
通話中の告知と利用目的の通知は分けて考える
個人情報保護委員会によると、通話内容から特定の個人を識別できる場合、その内容は個人情報に該当します。
この場合、個人情報保護法上、利用目的を本人に通知または公表する義務があります。一方、録音していることを通話中に必ず伝える義務まではありません。
カスハラの事実確認に使うことを利用目的へ反映する
録音を応対品質の向上だけでなく、トラブルやカスハラの事実確認にも利用する場合は、その用途が分かるように利用目的を具体化します。
厚生労働省のQ&Aでは、公表方法の例として、プライバシーポリシーなどに利用目的を記載し、自社サイトのトップページから1回程度の操作で到達できる場所に掲載する方法を示しています。
電話の冒頭で案内する場合の文例:
「お客様対応の品質向上と、トラブル発生時の事実確認のため、この通話を録音いたします。」
案内文やプライバシーポリシーは、実際に録音を利用する目的に合わせて整えます。
アクセス権限、保存、共有のルールを決める
運用時には、次の点を整理しておくと、必要な記録を確認しながら、不要な閲覧や持ち出しを抑えやすくなります。
- アクセス権限: 再生、ダウンロード、削除を行える担当者を定め、異動や退職時には権限を見直す。
- 保存期間: 利用目的に応じた期間と削除方法を決め、システムの自動削除の条件も確認する。
- 事案の記録の保全: 調査や対応が続いている録音は、必要性を確認した上で通常の削除前に保全し、その後の保存期間も管理する。
- 共有方法: 社内外へ共有する場合の承認者と方法を決め、共有の適法性を確認した上で必要な範囲に限って扱う。
サービスの標準保存期間は、その会社に必要な保存期間と必ずしも一致しません。長く残せるかだけでなく、必要なデータを保全し、不要になったデータを適切に削除できるかも確認します。
電話のカスハラ対策チェックリスト
導入済みの仕組みが現場で使えるか、次の項目で確認しましょう。
| チェック | 確認項目 |
|---|---|
| カスハラへの基本方針と判断基準を従業員へ周知している。 | |
| 相談先と管理者への連絡方法を定め、不在時の対応も決めている。 | |
| 警告、引き継ぎ、通話終了の基準と文例を共有している。 | |
| 脅迫など悪質なケースで連絡する社内外の窓口を定めている。 | |
| 通話内容と対応経緯を記録し、必要なときに確認できる。 | |
| 録音する場合は、利用目的、アクセス権限、保存と削除のルールを整えている。 | |
| 被害を受けた従業員のケアと、その後の顧客対応の担当者を決められる。 | |
| 相談者などのプライバシーを守り、相談を理由とした不利益な取り扱いを防いでいる。 | |
| 発生した事案を振り返り、対応手順や研修を見直している。 |
電話対応の負担や人員配置を見直す際は、CIRCLEコールレポーティング(CCR)で確認できる通話件数や応答率も参考になります。
CIRCLEの通話録音で電話のカスハラ対策をサポート
CIRCLEでは、クラウドPBXの有料オプションとして全通話録音機能(CVR)を提供しています。着信・発信の通話を自動録音し、クラウド上の専用ポータルで確認できます。
| 機能 | カスハラ対応での使い方 |
|---|---|
| 自動録音と録音対象の設定 | 特定の番号や部門を対象に、担当者の録音開始操作に頼らず通話を記録する。 |
| 日時や電話番号による検索 | 申告された日時や相手の番号から、問題となった通話を探す。 |
| 再生とダウンロード | 実際のやり取りを確認し、対応が続く事案の録音を社内ルールに沿って保全する。 |
| 組織内でのアクセス権限管理 | 録音を確認する担当者の権限を管理する。 |
2026年10月1日時点の料金表では、録音時間の制限はなく、録音保存期間は180日です。基本料金では、管理者1名がブラウザーから録音内容を確認できます。必要な利用人数や確認体制に合わせて、構成と費用をご確認ください。
電話のカスハラ対策として通話録音を検討している場合は、現在の電話環境、録音したい番号や部門、録音を確認する担当者についてCIRCLEへご相談ください。




